出典:「潤滑用語集」日本潤滑学会編
アブレッシブ摩耗[-まもう,abrasive wear]
すべり合う固体面間において硬い異物が介在したり、一方の面が硬くて粗い場合あるいは固体表面と粒子が高速で衝突する場合などに主として削り取りによって固体表面が摩耗する現象。
境界潤滑[きょうかいじゅんかつ,boundary lubrication]
潤滑面の油膜が薄くなり(たとえば表面のあらさ程度以下)、油膜を通して局部的に金属接触点が生じているような潤滑状態で、その際の摩擦は、潤滑油の粘度では決まらずに薄い油膜のせん断と金属接触点のせん断の要素に左右される。
したがって摩擦の大きさは流体摩擦と乾燥摩擦の中間となり、摩擦係数は、たとえば0.1前後の値である。
したがって摩擦の大きさは流体摩擦と乾燥摩擦の中間となり、摩擦係数は、たとえば0.1前後の値である。
凝着摩耗[ぎょうちゃくまもう,adhesive wear]
2固体間の真実接触面積を構成する凝着部分が、摩擦運動によりせん断されることに基因して生ずる摩耗現象。
その生成機構は十分明らかではないが、摩耗現象の基本的な形態であって、常にあらゆるすべり摩耗現象の一部もしくは大部分を占める。
ことに潤滑油の存在しない場合、摩擦面の表面あらさが小さい場合、2面の硬さの差が少ない場合、2面が類似の金属で凝着しやすい場合には、凝着摩耗がほとんど支配的に生ずる。
その生成機構は十分明らかではないが、摩耗現象の基本的な形態であって、常にあらゆるすべり摩耗現象の一部もしくは大部分を占める。
ことに潤滑油の存在しない場合、摩擦面の表面あらさが小さい場合、2面の硬さの差が少ない場合、2面が類似の金属で凝着しやすい場合には、凝着摩耗がほとんど支配的に生ずる。
固体膜潤滑[こたいまくじゅんかつ,solid film lubrication]
軟質金属、金属酸化物、合成樹脂、層状結晶固体などの被膜で、乾燥状態または液体潤滑剤との共存で摩擦係数を減らし、すべりによる表面の損傷を防ぐものである。
それらより硬度が大でじん性に富んだ摩擦面に使用したときに効果を発揮するものであり、また、耐荷重限界をこえない限りは、面圧が高く厚さが薄い方が小さい摩擦係数を得られる。それらの条件が最も適したときの摩擦係数は0.01前後にも達するが、たいていは0.1程度であり、0.25をこえたときは効果を失っているものとみなしてよい。
それらより硬度が大でじん性に富んだ摩擦面に使用したときに効果を発揮するものであり、また、耐荷重限界をこえない限りは、面圧が高く厚さが薄い方が小さい摩擦係数を得られる。それらの条件が最も適したときの摩擦係数は0.01前後にも達するが、たいていは0.1程度であり、0.25をこえたときは効果を失っているものとみなしてよい。
耐荷重性も200kg/m2程度に達する場合もある。しかし摩耗寿命は比較的短い。
摩耗寿命は作成過程のそれぞれの部分によって著しい影響を受けるので詳細な注意が必要である。耐摩耗被膜作成法のほかバインダと混合した塗布・焼付けの方法も用いられる。
自己潤滑材料[じこじゅんかつざいりょう,self-lubricating material]
PTFE、ポリエチレン、炭素材料、複合軸受材料などで代表されるように、摩擦係数の小さいバルク材料。
自己および相手表面に摩擦再配列した付着膜をつくる潤滑機構であり、部品材料または自己犠牲潤滑材料として使われる。
自己および相手表面に摩擦再配列した付着膜をつくる潤滑機構であり、部品材料または自己犠牲潤滑材料として使われる。
スティックスリップ[stick slip]
機械的振動系において摩擦による減衰が負であることに原因する自励振動の一種で、一般に鋭いのこ歯状の付着、すべりの振動模様を示す。摩擦係数がすべり速度の増加とともに減少するときや静摩擦から動摩擦に移る際の不連続的な摩擦低下を含むときに発生することがあり、その周期はすべり速度や系の弾性的性質などによって決まる。ただし、単に摩擦の速度特性だけでなく、摩擦面間の微視的な凝着部の形成、破断も関係するといわれている。
PV値[ピー・ブイち,PV factor, PV limit, PV value]
軸受圧力Pとすべり速度Vの積で与えられる軸受の作動限界を与える重要な因子。
流体潤滑状態では、潤滑理論によって軸受の負荷容量、摩擦力、油量、温度上昇などが計算できるが、境界摩擦あるいは乾燥摩擦状態では、軸受材料、潤滑剤の物理化学的特性がからみあって予測がつきにくい。このような場合に、概括的ではあるがPV値による作動限界の評価が有効となる。
PV値は軸受の作動限界を与える許容温度上昇および許容摩耗率に関係する。
流体潤滑状態では、潤滑理論によって軸受の負荷容量、摩擦力、油量、温度上昇などが計算できるが、境界摩擦あるいは乾燥摩擦状態では、軸受材料、潤滑剤の物理化学的特性がからみあって予測がつきにくい。このような場合に、概括的ではあるがPV値による作動限界の評価が有効となる。
PV値は軸受の作動限界を与える許容温度上昇および許容摩耗率に関係する。
まず、軸受面での発生熱量HgはHg=FV/J=fWV/Jで与えられ、軸受面からの放散熱量HdはkAΔtで与えられる。ここにFは摩擦力、Jは熱の仕事当量、fは摩擦係数、Wは荷重、kは定数、Aは軸受面積、Δtは温度上昇である。
Hg=Hdとおくと、PV=JkΔt/fを得る。fを一定と仮定し、Δtを許容温度上昇とすると、許容温度上昇を与える最大のPV値が定まる。
また、凝着摩耗のモデルに基づけば、軸受の摩耗量はVlはVl=kwAoLで与えれる。ここにkwは定数、Aoは真実接触面積、Lは移動距離で、Aoは荷重をW、硬さをHとしてW/Hで与えられる。
摩耗厚さをh、時間をTとすると、Vl=Ah、L/T=Vの関係があるから、結局、PV=hH/Tkwの関係を得る。
h/Tを許容摩耗率にとり、Hとkwを一定と仮定すると、許容摩耗率を与えるPVの値が一義的に定まる。
PVの限界最大値は、このような決め方によるから材料、仕上げ、表面処理、潤滑状態によって異なる。したがって、軸受材料あるいは機械の使用状態などに応じた相当広い範囲の値として与えられることが多い。
設計に際しては作動条件におけるPVの値が、与えられている許容値をこえないように検討することが肝要である。しかしながら、経験的な要素の強いPV値のみによって詳細な検討を行うことはできない。
摩耗厚さをh、時間をTとすると、Vl=Ah、L/T=Vの関係があるから、結局、PV=hH/Tkwの関係を得る。
h/Tを許容摩耗率にとり、Hとkwを一定と仮定すると、許容摩耗率を与えるPVの値が一義的に定まる。
PVの限界最大値は、このような決め方によるから材料、仕上げ、表面処理、潤滑状態によって異なる。したがって、軸受材料あるいは機械の使用状態などに応じた相当広い範囲の値として与えられることが多い。
設計に際しては作動条件におけるPVの値が、与えられている許容値をこえないように検討することが肝要である。しかしながら、経験的な要素の強いPV値のみによって詳細な検討を行うことはできない。
フレッチング[fretting,fretting corrosion]
接触する2固体間に微小な接線方向の振動が与えられたときに生ずる表面損傷。
ふつうの往復すべり摩耗とは異なる機構で損傷が生ずるといわれており、ふん囲気の影響を強く受ける。
ふつうの往復すべり摩耗とは異なる機構で損傷が生ずるといわれており、ふん囲気の影響を強く受ける。